小規模宅地等の特例の厳格化
12月14日、与党が平成30年度税制改正大綱を決定しました。
自民党の税制改正大綱(原文はこちら)から、相続税に関する項目をご紹介・解説します
主な項目は、以下の3つです。
- 事業承継税制の特例の創設
- 一般社団法人等を利用した相続税節税策に規制
- 小規模宅地等の特例の厳格化
このうち、「事業承継税制の特例の創設」と、「一般社団法人等を利用した相続税節税策に規制」は、事業承継に関連する項目のため、別の記事で解説しています。
こちらをクリック → 一般社団法人等を利用した相続税節税策に規制
ここでは、相続税に大きな影響のある「小規模宅地等の特例」についての改正を中心に解説します。
小規模宅地等の特例 どこが変わったの?
小規模宅地等の特例は、土地について、
- 居住用であれば、330㎡まで80%減額
- 事業用であれば、400㎡まで80%減額
- 貸付用であれば、200㎡まで50%減額
という、相続税を計算する際には、とても大きな減額要素となる制度です。
これについての今回の改正点は2つ。
- 居住用の宅地について、配偶者・同居親族がいない場合、過去3年間持ち家がない者(いわゆる家なき子)が適用対象とされてきましたが、これを厳格化
- 3年以内に貸付をはじめた宅地(貸マンション、貸アパート、貸しビルなどの敷地)を適用対象から除外
いずれも、加熱する節税行為にメスをいれて厳しくしようという改正です。
1.家なき子の改正内容
亡くなった方が住んでいた家に、配偶者や同居親族がいる場合には、その配偶者や同居親族にこの制度の適用の優先権があります。
配偶者や同居親族がいない場合には、過去3年間、自分自身や配偶者が持つ家に住んだことがない人が対象になります。
(業界では、俗に「家なき子」と呼んでいます。)
この制度の適用を受けるために、わざと持ち家を親族などに売り払ったり贈与したりして、持ち家がない状態にしておく過度な節税行為が横行している状況が問題視されました。
このため、今回の改正では、
- 過去に、居住の用に供していた家屋を所有していたことのある人
- 相続開始前3年以内に、親族が所有する国内にある家屋に居住したことのある人
は、この制度の適用対象から除外されることになりました。
この改正は、平成30年4月1日以後の相続について適用となります。
2.3年以内に貸付をはじめた宅地の除外
平成27年から相続税の基礎控除が引き下げられたことをきっかけに、貸付用のマンション、アパートの新築や購入が大ブームとなっています。
この過熱気味の状況を抑制する改正と思われます。
相続開始前3年以内に貸付をはじめた物件の土地(貸マンション、貸アパート、貸ビルなどの敷地)については、この制度の適用対象から除外されることになりました。
ただし、もともと3年以上前から事業的規模で不動産賃貸業を行っていた方が、たまたま3年以内に建て替えた場合や、建て増し・買い増した場合には、3年以内取得分も、従前どおり、対象となります。
(事業的規模とは、アパート等についてはおおむね10室以上(貸家の場合には、おおむね5棟以上)です。)
この改正は、平成30年4月1日以後の相続について適用となりますが、平成30年3月31日以前から貸し付けられていた物件については従前どおり、対象となります。
このため、来年3月までは、すぐに購入可能な貸付用のマンションなどは、駆け込み需要があるものと思われます。