認定医療法人の新認定要件案が判明!

認定医療法人の新認定要件案が判明!


医療法人の事業承継に関するテクニカルレポートです。

 

厚生労働省が、平成29年度税制改正により創設された「医療法人の持分の放棄があった場合の贈与税の課税の特例」に関連して、「医療法施行規則の一部を改正する省令案」のパブリックコメントの手続きが開始しました。

 

電子政府の総合窓口 http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495170139&Mode=0

そもそもどんな制度?


医療法人は配当することができないため、経営が良好な法人は内部留保が積みあがる傾向があります。

 

一方、一般的な持分のある医療法人の出資金は、通常通り相続税の課税対象となるため、相続時には高額な相続税の負担を強いられるケースがあります。

 

これに対する一つの解決法として、出資者が持分を放棄し、持分なし医療法人へ移行することにより、相続税の対象から外すことが考えられます。

 

しかし、様々な厳しい要件を満たさない限り、移行時に法人に対して贈与税が課されることとされています。

 

この取扱いについて、平成29年度税制改正により、あらかじめ移行計画の認定を受け、その計画に基づき移行を行った場合には、贈与税を課税しないこととなりました。

今回、なにが明らかになったの?


 

贈与税が課税されないためには、なんでもよいというわけではなく、移行計画の認定を受けた医療法人が対象です。

その認定要件の案が今回、明らかになりました。

 

改正案の条文のうち、関係部分の抜粋

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一 当該経過措置医療法人の運営について、次のいずれにも該当すること。

イ その事業を行うに当たり、社員、理事、監事、使用人その他の当該経過措置医療法人の関係者に対し特別の利益を与えないものであること。

ロ その理事及び監事に対する報酬等について、民間事業者の役員の報酬等及び従業員の給与、当該経過措置医療法人の経理の状況その他の事情を考慮して、不当に高額なものとならないような支給の基準を定めているものであること。

ハ その事業を行うに当たり、株式会社その他の営利事業を営む者又は特定の個人若しくは団体の利益を図る活動を行う者に対し、寄附その他の特別の利益を与える行為を行わないものであること。ただし、公益法人等に対し、当該公益法人等が行う公益目的の事業のために寄附その他の特別の利益を与える行為を行う場合は、この限りでない。

ニ 当該経過措置医療法人の毎会計年度の末日における遊休財産額は、直近に終了した会計年度の損益計算書に計上する事業(法第四十二条の規定に基づき同条各号に掲げる業務として行うものを除く。)に係る費用の額を超えてはならないこと。

ホ 当該経過措置医療法人につき法令に違反する事実、その帳簿書類に取引の全部若しくは一部を隠蔽し、又は仮装して記録若しくは記載をしている事実その他公益に反する事実がないこと。

 

二 当該経過措置医療法人の事業について、次のいずれにも該当すること。

イ 社会保険診療に係る収入金額、健康増進事業に係る収入金額、予防接種(予防接種法(昭和二十三年法律第六十八号)第二条第六項に規定する定期の予防接種等その他厚生労働大臣が定める予防接種をいう。)に係る収入金額、助産に係る収入金額及び介護保険法の規定による保険給付に係る収入金額(租税特別措置法第二十六条第二項第四号に掲げる給付に係る収入金額を除く。)の合計額が、全収入金額の百分の八十を超えること。

ロ 自費患者に対し請求する金額が、社会保険診療報酬と同一の基準により計算されること。

ハ 医療診療により収入する金額が、医師、看護師等の給与、医療の提供に要する費用(投薬費を含む。)等患者のために直接必要な経費の額に百分の百五十を乗じて得た額の範囲内であること。

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ポイントは?


ポイント1

最もハードルが高いといわれる「役員の親族要件」がない

同族支配を維持したい医療法人にとって朗報です。

 

ポイント2

「4疾病5事業」の縛りがないため、精神科など、幅広い診療科で適用可能

 

ポイント3

遊休財産額について制限規定がある(一号ニ)

 

以上のように、従前よりはハードルが低くなっています。

依然として、社会保険診療報酬の割合が80%以上とか、自費患者に対する請求が社会保険診療報酬と同一などの要件はありますが、経営が良好な医療法人は、これを機会に、真剣に活用を検討してみてはいかがでしょうか。

 

税理士事務所クオリスでは、認定の可能性の分析・アドバイス、認定申請等の手続などを行っております。

ぜひ一度、ご相談ください。